− 特 集 −
読書の秋? いいえ、スポーツの秋です
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まさに表題どおり。スポーツ小説を読むことで、あたかも自分もスポーツ選手になったかのような、そんな贅沢な気分を味わおうという企画です。
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●『DIVE!!』(森絵都著 講談社)
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水泳競技のなかでも、おそらくマイナーな部類に入るであろう「飛び込み」を扱った、森絵都作品のなかでも珍しいストレートなスポ根小説であるが、これがまた熱い!
存続の危機を迎えているミズキダイビングクラブのコーチとしてやってきた麻木夏陽子が、その才能を見出した少年たちとともに、最終的にはオリンピック代表の座を目指して果敢に挑戦していくという本書は、個性的な少年たちの抱える葛藤や、健全なスポーツの世界の裏にある大人たちの打算など、けっして「爽やか」な要素だけではないのだが、そうした悩みや苦悩を乗り越えて、なお前へ進んでいこうとする様子が、まさに青春小説の王道そのものなのだ。
足が台から離れてから水に飛び込むまでの、わずか1.4秒の空中演技が、このうえなく魅力的に見えてくる爽快なスポーツ小説。
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●『ファイアボール・ブルース』(桐野夏生著 文藝春秋)
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桐野夏生といえば、今では人の心の闇を見据えるような社会派的な作品が多いが、じつはスポーツものの作品も手掛けていたりする。
女子プロレス+ミステリーという取り合わせの本書は、弱小新興団体に所属する女子プロレスラー火渡抄子と、その付き人でまだ一勝もできない近田のコンビが、火渡と対戦した外人選手の失踪事件の謎を追うというものであるが、なにより火渡抄子の存在が圧倒的だ。ショービジネスとしてのプロレスではなく、あくまで「勝つためのプロレス」にこだわる火渡の孤高さは、一流のスポーツ選手だけがもちえる美しさと強さに満ちている。
ミステリーとしての謎解きよりも、女子プロレスの厳しい世界を通じて彼女たちが何を思い、どんな成長を遂げるのかに目が離せなくなる一冊。
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●『19分25秒』(引間徹著 集英社)
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競歩という地味な競技をあつかった本書に登場する主人公は、事故で左足を失った競歩選手である。だがこの男、片足が義足なのにそれでもとんでもなく速く歩く。タイトルは、彼が5kmを「歩く」タイムでもある。
深夜の公園で彼の「歩く」姿をまのあたりにしてから、その殺気じみたエネルギーに惹かれてしまう語り手の視点から書かれる、あくまで自分のために歩くという信念を貫く競歩選手の姿は、ひたむきではあるが、いっぽうで自己中心的で、倒錯してもいる。オリンピックも、世界記録の更新も眼中にない彼が見つめているのは、はたしてどんな光景なのか。
スポーツという言葉のもつ爽やかさとは、また違ったストイックな世界を垣間見ることができる一冊。
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