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海外翻訳ものの作品の売れ行きが不調だそうですが、海外翻訳ものは世界的にもその価値の認められた作品が翻訳されるだけあって、圧倒的に高レベルで面白いものが多いです。登場人物の名前が覚えられない? なんて躊躇している方にも取っ付きやすい作品を、ここでは取り上げていきます。
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●『観光』(ラッタウット・ラープチャルーンサップ著 早川書房)
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「ガイジンと犯罪者と観光客の天国」と呼ばれるタイの現状は、じつは日本以上に極端な格差社会。『観光』はそんなタイの底辺に生きる人たちにスポットを当てた短編集です。
もうすぐ目が見えなくなる母を連れて、はじめての旅行に繰り出していく表題作の『観光』をはじめ、アメリカ軍人を父に持つハーフの少年と飼っているブタを主人公とする『ガイジン』、カンボジア難民の少女との出会いと別れを描いた『プリシラ』など、いろいろ複雑でけっして裕福とは言えない環境のなかで、深い悲しみにくれながらも、それでも力強く生きていこうとする登場人物たちの姿は、読む人にいろいろ考えさせるものがあります。
短編としての構成も秀逸で、ごく何気ないシーンのなかに感情的な余韻を残していくところなど、短編ならではの読みごたえもある作品に仕上がっています。
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●『リンさんの小さな子』(フィリップ・クローデル著 みすず書房)
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フィリップ・クローデルというと、「死」の雰囲気を匂わせる重苦しいテーマの『灰色の魂』あたりが有名どころですが、本書は異国人どおしの心の交流を描いたもの。
戦争で家族を失い、唯一生き残った赤ん坊をつれて避難してきた老人のリンさん。まったく寄る辺ない立場にいる彼は、とある公園で同じようにひとりベンチに座っているバルクという男と出会う。異なる国の言葉しか知らないため、お互いに何を言っているのかはわからない。だが、彼もまた何かを失った悲しみにくれていることをリンさんは直感し、その公園でバルクと会うことが日課となっていく。
言葉は通じなくとも、わかりあえるものはきっとある――物語の裏に隠された数多くの悲惨と死を越えて、なお生きていこうとする命の灯がこのうえなく美しい本書は、感動間違いなしの傑作です。
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●『香水』(パトリック・ジュースキント著 文藝春秋)
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2007年3月に「パフューム」という邦題で映画にもなった本書は、生まれつき嗅覚が異常に鋭いグルヌイユという男の数奇な生涯を描いたもの。
この世にあるあらゆるものを「匂い」で嗅ぎ分ける彼は、やがて香水調合師として才能を開花させる。誰もが彼の生み出す香水に夢中になるが、グルヌイユの美しい処女たちの体臭を保存したいという欲望は抑えがたいものとなり、やがて国中を震撼させる連続殺人へと彼を駆り立てていく……。
美しい処女のエキスから、究極の香水を生み出すという大それた野望がどういう運命を辿ることになるのか? 物語の展開はもちろん、最後の最後に待っている意想外な結末は見事というほかにない不思議な作品です。
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