栗田読書倶楽部Web通信

2008年(平成20年)1月25日

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− 読書倶楽部は今年もほそぼそと読書する −

約半年ぶりの更新ですが、栗田読書倶楽部は今年もほそぼそと活動していきます。
 『沖縄を撃つ!』(花村萬月 集英社新書)

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 出店の現地調査で昨年十一月に二○年振りに沖縄へ行きました(元来「雨男」なもので往復の飛行機はバカ揺れジェットコースター状態、現地滞在3日間とも強風&雨。東京から持参した折りたたみ傘は初日に空港を一歩出た瞬間に壊れてホネだけになりました)。実際、現地に着いてからの3日間は、本土復帰から何十年も経っているのですが「異国」を感じました。自分自身のこの違和感はなぜなんだろう?と東京に帰ってきてからもずっとありました。単細胞なので「沖縄」と書名についているものも多数読んでみました。その乱読したなかで一番分かりやすかった一冊を今回は紹介します。
「沖縄を撃つ!」集英社新書、花村萬月著。(この一冊は沖縄M書店宜野湾店視察時に購入。勿論、当社帳合のT書店でも3冊別の本は買いました。後藤田正晴の品切れ本を発見しました)いやはや「そうなのー」って唸りながら、帰りの飛行機でイッキ読みしました。読んでから沖縄に行けば良かったと残念無念。私の違和感の原因はすっかり氷解。スッキリ。
 内容はあえて触れません。日本人なら一度は読むべしです(しかし、この本を読むと「日本」っていう国に生まれてきたのが恥ずかしい・・・)。
 せっかく花村萬月の名前が出たので著者ベスト本を紹介します。(ちなみに「ゲルマニウムの夜」で芥川賞取ってる作家です。この人は、若いころにさんざん悪さしていたので、現在は酒もタバコも覚醒剤も大麻もやっていません。特に音楽、バイクに関する描写に長けています)
@「ゴッドブレイス物語」集英社文庫 著者デビュー作。すばる文学賞受賞作。まずはこれから読んでみてください。この作品で「合わない」方は、他の作品は絶対無理です。
A「たびを」実業之日本社 これはわりかし最近の著作。芥川賞受賞以来すっかり「文藝色」が強くなってしまい(ファンは従来のヤクザものを待っているのに・・・)淋しかったのですが、この一冊は日本全国をスーパーカブで一周するという青春小説。ただし、束が6cm以上あるので自宅でじっくり読むしかありませんが。
B「眠り猫」新潮文庫 これは元々徳間ノベルス。従来のファンが好きなヤクザものです。これが気に入ったら「笑う山崎」「猫の息子」へ進んでください。
 このほかにも、青春小説、時代小説、エッセイもあり全部読んでも間違いなしです(純文学は?ですが・・・)。是非、ご一読ください。
 ライバルのKD部長様へ 今回はゴルフネタじゃなくてすみません・・・実はかなりのゴルフ関連書を読み続けてますが、でも本読んでも上手くならないことは私で実証済みですので。(しかたなし)

 (ただし、「イメージトレーニング」ばかりもいかがなものでしょうか?)
 『文学賞メッタ斬り!』(大森望・豊崎由美 筑摩文庫)

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 今年も直木賞・芥川賞が発表されましたが、皆さんの予想はいかがでしたか。そんな時期なので今回は文学賞についてのウンチクを堪能できる本を紹介します。
 本書は元新潮社の社員だった評論家大森氏とライターの豊崎氏が、文学賞の数々を様々な観点から徹底的に斬っていくというもの。対談形式で書かれているので、サクサク読めて面白かったです。面白かった、というよりも、実は非常にタメになりました。
 公募の新人賞と非公募の文学賞との違い。それぞれの文学賞の傾向とウラ話。選考委員の顔ぶれによってかなり左右される部分が大きいのも面白かった。
 芥川賞・直木賞の選考委員は『死ぬまで降板しない』とか、受賞作は文藝春秋から刊行されている本が多いとか・・・。前から気になっていたんですよ。文藝春秋の受賞作が多いと。
 そもそも賞の創設者の菊池寛が、文藝春秋の創設者でもあるので、当然だとは思っていましたが、雑誌の売上と関連していたとは気づかなんだ。『ニッパチ』という通り、2月と8月は雑誌の売上が低迷します。そこの部数増を狙って始まったのがこの芥川賞・直木賞なんだそうで。そうか、なるほど!
 2月(3月号)と8月(9月号)の文藝春秋には、毎年芥川賞が全文掲載されるので、通常号よりも断然売れるワケです。なので、『受賞作なし』だとほんとに困る。
 今回、単行本の方も見事文藝春秋の本が受賞の運びとなったので、とりあえずは良かった良かったと。
 この他にも本書は様々な文学賞についてや、膨大な量の候補者・受賞者、作品について斬りまくっています。大森氏と豊崎氏のやりとりがまた面白い!
 小説好きさんはもちろん、出版業界人も必携の書だと感じました。(ニャゴ)
− 地域紛争を身近に感じるために −
 ふだんはふざけたテーマばかり考えている私ですが、たまには真面目に語りますよ。たとえば、戦争。日本では「戦争」というと、太平洋戦争の悲劇を思い浮かべる方が多いと思うのですが、今、現実に行われている戦争、という意味では、地域紛争もまたひとつの悲劇です。ですが、その悲劇も平和な日本で生きる私たちにとっては、せいぜいメディアの流すニュースのひとつ、というのが正直なところでしょう。ふだん無関心なニュースに興味をもってもらう、そのために物語の力が役立つ時もあります。
『さよなら妖精』
(米澤穂信 創元推理文庫)
 まず、米澤穂信の『さよなら妖精』。本書にはユーゴスラヴィアから日本にホームステイしてきたマーヤという女の子が登場するが、彼女のかかえるひとつの謎が、そのままユーゴスラヴィアという国の厳しいリアルとして、彼女に接する機会を得た高校生たちの胸に染み込んでいく過程が秀逸なミステリーで、青春小説としても充分な魅力をもっています。
 次はゴードン・スティーヴンズの『カーラのゲーム』。本書は、いきなりハイジャックの現場からはじまるというインパクトのある小説だが、それ以上に衝撃的なのが、その首謀者カーラの過去。常にスナイパーが狙っている橋を渡らなければ食糧を得るのもままならない、という地域紛争の極限状態を生きた、一市民にすぎなかった彼女が、どのような過程を経てハイジャックの首謀者となったのか、という展開が非常にスリリングな作品でもあります。
『カーラのゲーム』
(ゴードン・スティーヴンズ 創元ノヴェルズ)
『テロル』
(ヤスミナ・カドラ 早川書房)
 最後はヤスミナ・カドラの、その名も『テロル』。この作品では、それまで幸せに生きていたはずの妻が自爆テロを敢行したというショッキングな事実がテーマとなっています。舞台となるのは、イスラエル。一部のパレスチナ人による過激なテロ行為が日常茶飯事というその町で、夫は否応なく地域紛争というもの、そしてその根底にある傷ついた人々の心について、考えざるを得なくなります。
 今も世界のどこかで続けられている極地の戦争――その悲劇に、個人としてどのような意見をもつべきなのか、そのきっかけとしてこうした小説を読むのも、読書のひとつの形ではないでしょうか。