− 特 集 −
読書倶楽部メンバーによるオススメ本紹介
(その2)
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●『オシムの言葉』(木村元彦 集英社)
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最近、オシム語録というものを耳にする機会が増えた気がする。ドイツW杯で惨敗した日本代表の新しい監督に就任した、イビツァ・オシムがJリーグの監督だったときのコメントにメディアが名づけたのがそれだ。
ランニング主体の激しい練習についてのコメント「走りすぎて死ぬことはありません」Jリーグ首位に立ったときの感想「ジェフが首位にいると困りますか」試合に引き分けたとき「肉でも魚でもない」など。一見、でなくてもただの偏屈親父に見えるかもしれないが、彼の言葉は選手やマスコミへの謎かけであり、彼の人生経験が生み出した処世術でもある。
旧ユーゴスラビア代表監督としてW杯にも出場した経験を持つオシム。彼は祖国内戦時に「隣人殺し」をしている多民族の選手を束ねて、試合をこなす難事業に挑まなければならなかった。サッカーに政治を持ち込むマスコミに対して、彼は常に本心を韜晦してコメントを発表せざるを得なかった。でなければ、それぞれの民族の選手を起用するように迫るマスコミや政治家の圧力をかわすことができなかったのだ。
自身も一家離散、激戦のサラエボに妻が取り残されてしまった苦い過去を持つオシムは、旧ユーゴスラビアの内戦は政治家とマスコミの扇動によるところが大きかった、と考えているようである。言葉が独り歩きして隣人殺しを唆しのだ。その暴力性を思い知らされた経験が「オシム語録」を生み出した。
言葉の恐ろしさを知り尽くしたオシムが、逆に言葉を利用して選手を、チームを動かし、代表選手が一人もいない弱小クラブだったジェフ千葉をして戦う集団へと変貌させ、チーム初タイトルまで獲得させたのだ。彼のサッカー人生の集大成として挑むであろう日本代表監督。今度はどんな言葉でチームを仕上げてくるのか。この本を読めば、日本代表戦が何倍もおもしろくなるはすだ。(赤唐辛子)
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●『本が崩れる』(草森紳一 文春新書)
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本好きなら一度は噂を耳にしたことがあるのではないか、草森紳一「随筆 本が崩れる」を今さらながら読みました。
「新書」ってシリーズが何かおカタそうだし、本にまつわる小難しい講釈をたれられても、と敬遠していたのですが、ある友人に「とにかく面白いから読め」とすすめられ手に取ったところ・・・、スマヌ、ある友人よ、めちゃくちゃ面白いよ、これ。
表題作「本が崩れる」。内容はタイトル通り、風呂場の周りに積んであった本が倒壊、ドアが本に塞がれ、中に閉じ込められてしまった著者が風呂場の外へ脱出するまでの顛末記です。
「物書き」を職業とする著者は、趣味の「読書人」の様な本の集め方はしません。ひとつの著作を仕上げるために、その本の中に「資料」として使える一行さえあれば片っぱしから買いあさる。そんな風にして本を手に入れればもはや「ねずみ算式に増殖していく」のは必定で、部屋のあちらこちら、果ては廊下の壁ぎわまで本が横積みでそびえ立っている始末(このすさまじさは本書の著者が撮った写真を見ていただければ一目瞭然でしょう)。あげく、この騒動。
そして、自ら収集した本達が引き起こした災いに対して著者は一言、「あいつら、俺をあざ笑っているな」。フルッている!。
他の二編、「素手もグローブ」「喫煙夜話この世に思残すこと無からしめむ」も秀逸。「素手〜」では、地震の際、寝ている著者が「顔面に振りかかる本」から逃れられたのは、少年時代に野球で覚えた「手首の返し技のせいだ」などとヘンテコな分析をしたり、「喫煙〜」に至っては、愛煙家の著者が現代の喫煙環境の悪化を嘆き、嫌煙家に「人間のくず」とみなされても、「屑でも愛煙家はスターダストだ」と高らかに(?)に宣言する。
「なんと偏屈な人だろう」とあきれるかもしれませんが、いえいえ、そうではなく、自身に被害がふりかかるにも関わらず本を鬼集し続ける愚かさ、「ショートピースがなくなった日には、いさぎよく禁煙」すると言いつつ、「一日六十本」吸ってしまう弱さを自覚しているからこそ、何かとキュウクツな世相に対してヘリクツで応戦する、いわば「カワイイお方」なのです。
久々にスカッとする本を読みました。普段は専門的な著作が多い方らしいけれど、今後もときどきはこんな随筆(まさに随筆。エッセイではない)で、著者の「ワル」振りを堪能したいものです。(紅朗)
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●『スティルライフ』(池澤夏樹 中公文庫)
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栗田に在籍しているのに、「あまり本を読みません。」「読書ってあんまりー」という方々に向けて今回は特にこの1冊をご紹介したいと思います。(栗田読書倶楽部のモット−は「読書推進は社内から!」ですので。)まず、冒頭の9ぺージと一○ページだけでも読んでほしい。五○○円がこれほど安く感じる瞬間は、なかなかありません。(読書倶楽部書棚に入れておきますから、「買うのはちょっと」という方は借りてみて下さい。)
もったいぶらずに少しだけ引用します。
「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐにたっている。きみは自分のそばに世界という立派な木があることをしっている。それを喜んでいる。世界のほうはあまりきみのことを考えていないかもしれない。」
どうですか?読みたくなったでしょう? 私の思い入れがかなり大きいということもありますが、謡い調子で、全体を通してこれだけ日本語の上手い作家はいません。(ちなみに、池澤夏樹は詩人でもあり書肆山田より詩集出てます。あーそれから全編謡い調子といえば、落語では柳好ですねー。談志の芝浜とは違った意味で何度聴いても感心します。いけね、今回は落語本ばなしではなかった。落語本については次の機会に。次の機会といえば、ギャンブル本についてもひとこと言いたいことあるのですが・・・きりがない。)
閑話休題、本書について言えば、表題作ともう一篇からなる短編集。(芥川賞受賞作)なにしろ、現代純文学を真面目に書いている作家のなかでは現役バリバリのNO1。この作品はデビュー作なので、最近の著作を読むとかなり感じが違うかもしれません。もし、本書が気に入ったらば、次は「マシアス・ギリの失脚」を読みましょう。
(その次は「すばらしい新世界」がオススメです。その次は、ご自分で探してください。)
池澤夏樹は放浪癖というか、定住が嫌いな性質で、今までもギリシャ、沖縄、北海道、などなど転々と住まいを変えてます。住まいを変えるごとに作風も、内容も少しずつ住んだ場所に感化されて、変化していきます。それも楽しめます。
日曜日、あるいは夏季休暇でぽっかり一日あいたら、是非読んでみてください。買って読んでみて、「全然おもしろくなかった!」でしたら私がお金返します!(というぐらい自信の一冊です。S.T)
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読書倶楽部の選ぶ 06年上半期ベスト本
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●『浦島太郎はどこへいったか』
(高橋大輔 新潮社)
検証と実証の過程が面白い!
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●『クローズド・ノート』
(雫井脩介 角川書店)
「先生」のファンになります
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●『トリツカレ男』
(いしいしんじ 新潮社)
人を想う気持ちは無限大!
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●『極北の地にて』
(ジャック・ロンドン著 新樹社)
寒〜いアラスカを舞台にした短編集
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●『ミッションスクール』
(田中哲弥著 早川文庫)
元吉本台本作家の学校短編集
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●『ハルカ・エイティ』
(姫野カヲルコ著 文藝春秋)
「ツ、イ、ラ、ク」を読んで続け読み
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●『配達あかずきん』
(大崎梢著 東京創元社)
業界初!本格書店ミステリ
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◆ぜひ夏休みの読書の参考にしていただきたいと思います。
上半期ベストは次号に続きますので、ご期待ください!
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時を越えていく物語
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筒井康隆原作の『時をかける少女』劇場アニメーション公開記念、ということで、今回はいわゆる「タイムトラベル」ものの作品を紹介していこう。
たとえば、ウェルズの『タイムマシン』やハインラインの『夏への扉』、あるいはちょっと毛色の異なるものとしてはケン・グリムウッドの『リプレイ』など、昔から有名な作品はいくつもあるが、最近注目しているのは、コニー・ウィリスという作家だ。
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『ドゥームズデイ・ブック(上)』 (コニー・ウィリス 早川書房)
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『ドゥームズデイ・ブック』は、未来のオックスフォード大学の歴史研究という要素で、過去への時間跳躍が可能となっているという設定のもと、ある史学生キヴリンが中世のイギリスにタイムトラベルしてしまう、というもの。ペストが蔓延し、魔女狩りがおこなわれていた危険度の高い中世、しかも大学ではその後、未知のウィルスが発生し大混乱してしまうという状況で、はたして彼女は元の時代に無事戻ってこられるのか、というストーリーが展開する。内容はけっこうシリアスで、おおいに感動したい人にオススメのタイムトラベル本である。
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いっぽう、同著者の『犬は勘定に入れません』は、『ドゥームズデイ・ブック』とまったく同じ設定を使っていながら、うって変わってコメディータッチのタイムトラベル本だ。じつは本書、ジェロームの『ボートの三人男』のオマージュ作品でもあるのだが、とにかく主人公の史学生ネッドの周りに集まってくるのが、揃いも揃って奇人変人ばかり。そのせいで時間跳躍した先ではトラブルが続出、ついには歴史そのものにも齟齬が生じはじめてしまう始末。はたして彼に安息の日は訪れるのか。
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『犬は勘定に入れません』 (コニー・ウィリス 早川書房)
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『タイムトラベラーズ・ワイフ(上)』 (オードリー・ニッフェネガー ランダムハウス講談社)
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タイムトラベルといえば、時間跳躍ゆえの複雑な伏線や、それまでバラバラだった物語の断片が一気につながっていくというダイナミズムが大きな特長だが、オードリー・ニッフェネガーの『タイムトラベラーズ・ワイフ』などはまさにその典型だろう。この作品における時間跳躍は、本人の意思では制御も予測もできない、というのがミソで、「タイムトラベラー」である男と、普通の人間である女が、お互いに異なる時間を生きながらも、なお惹かれあい、一緒に暮らしていく様子を描いている。ゆえに、女の方は小さい頃から男のことをよく知っているのに、男の方は大人になるまで女のことを知らない、という奇妙な現象が起こったりする。
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時間は過去から未来へ流れるもの、という常識を根底から覆すのがタイムトラベルというジャンルの醍醐味。ややこしいといえばややこしいのだが、そんな普通ではありえない話を普通に味わえてしまえるのも、読書のひとつの楽しみである。
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